尼崎市の新井司法書士事務所です。

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緊張する仕事
【2013/07/28 06:51】

緊張する仕事 緊張する仕事
 司法書士の仕事は緊張感の高い仕事です。登記事件は基本的に申請書類の間違い、中でも、登記の原因となる法律行為が記載された書面(登記原因証明情報といいます)の間違いは絶対に許されません(申請した後に訂正ができない)。変な言い方ですが一発勝負です。
 これに対して裁判事件の書類は、一発勝負という訳ではありませんので、例えば間違った事実関係を記載しても、後から主張の訂正という方法でやり直すことができます。
 但し、後で訂正などすると主張が迷走している印象を与え裁判官に対する心証は悪くなるでしょう。
 裁判事件の書類については、一字一句間違いなく書かなければいけない、という緊張感はありませんが、そもそも主張している論理構成が正しいのか、主張の方向性は見誤っていないか、といった側面での緊張感があります。論理の組み立てが誤っていると、依頼者に対して任務懈怠の専門家責任が発生しますし、「この司法書士は何と稚拙な書面を書いているのか。」と裁判官に対しても大恥をかきます。勝てるはずの裁判に負けるという事態が発生してしまうのです。
 そして、中でも最も緊張する場面が、本人尋問、証人尋問などのの尋問場面です。私も過去に5度程度の経験がありますが、この仕事は本当に緊張します。テレビドラマのワンシーンで見かけるあの尋問風景をイメージして下さい。(但し、テレビドラマのシーンは刑事事件の尋問です。ここで言う尋問は民事事件のことですが、イメージは同じです。)私が尋問者となり、私の依頼者や、敵対する相手方当事者に、次々と質問をぶつけていき、自己の主張を裏付けるための証言を暴き出す作業です。
 この点、自己の依頼者に対する尋問は、事前に綿密な打ち合わせをしますので、予想もしない回答が返ってくることなど殆どないのですが、相手方当事者に対する尋問は、何を聞くかは予め策を練っていますが、相手方がどのように回答するかは、実際に尋問してみないと分かりません。勿論、こう聞けばこう返ってくると想定はしますが、あくまでも想定ですので、想定外の返答もありますし、その時は、想定外の返答に対する質問を反射的にぶつける必要があります。
 当たり前のことですが、事実関係を細かくインプットし、論点の見極めが正確にできていないと反射的に質問をぶつけることはできませんし、不適正な質問をしてしまうと相手方の主張を固めてしまうようなことにもなります。
 要するに、たった一つの尋問の誤りが命取りになることも起こりうるのです。
 本人尋問や証人尋問は、互いの主張立証がほぼ出尽くした後、訴訟の終盤に行われます。裁判官の頭の中で尋問までにほぼ結論が決まっていて、理由付けに念押しするという場合もあれば、尋問結果次第で結論が決するという場合もあるでしょう。いずれにしても、尋問まで行われる裁判は、互いの論理が拮抗し勝負の行方が分からない(どちらが勝ってもおかしくない)事件が殆どです。
 今日の尋問がうまくいけば勝てる、失敗すれば負けると考えると、心臓がバクバクし、子供のころの「かけっこ」で順番待ちしている時のように緊張するものです。
 重圧のかかる仕事ではありますが、今後も経験を積みたいと思う、非常に達成感のある充実した仕事でもあります。